みなさんこんにちは!
今回は、電気機器を扱う人の命を守る「接地」について、解説したいと思います。
目次
1.接地がないときの回路
2.電流は抵抗が低いほうに流れようとする
3.接地抵抗の測り方
4.まとめ
1.接地がないときの回路
接地(アース)は、電気機器が漏電した際に、その機械に触れた人間が感電しないように、接地線を介して地面に機器を接続することです。家庭では、冷蔵庫や洗濯機などの家電製品を使用する際に接地しますね。
では、ここで接地をしていない場合について考えてみましょう。
冷蔵庫や洗濯機等の家電製品は、絶縁がしっかりされていて通常は外側に電流が流れないように設計されていますが、何らかの原因で漏電が起きた場合について考えてみましょう。
漏電した電気機器に人が触れれば、漏電した機器→人間→機器という直列回路ができてしまいます。この時の回路を図1に表してみましょう。

図1
これを等価回路にしてみると、下記のようになります。
図2
実は、この回路では、人間も地面も抵抗です。
直列回路の場合、各抵抗に流れる電流は同じです。つまり、人体にも電流が流れるということです。電流が流れるということは、感電するということですから、大変危険です。
2.電流は抵抗が低いほうに流れようとする
では、次に接地をした場合の様子を図3に示します。
図3
これを等価回路にすると、図4のようになります。並列回路になっていることがわかりますね。

図4
◆電流の特性
ここで、電流の特性を見てみましょう。
並列回路の場合、電流は抵抗が少ないほうに流れ込もうとします。
人体の抵抗は約5.5[kΩ]ほどといわれています。では、人体に電流が流れないようにするには、人体よりもずっと低い抵抗を並列に接続すればいいですね(^^♪
そのイメージを図5に示してみましょう

図5
◆電流の分流
このとき、ここで、並列回路の分流の計算の仕方を復習しましょう。
下記のような回路があるとします。

図6
回路には電流Iが流れており、並列部分でI1,I2に分岐しています。
抵抗R1とR2が並列に接続されているとき、R1とR2に流れる電流IR1,IR2は、それぞれ下記のように求めることができます。

2つの抵抗が並列に接続されているとき、分流の式は、分母が抵抗の合計、分子は流れる抵抗と反対側の抵抗として、それを電流にかければいいのですね。つまり、反対側の抵抗が高ければ高いほど電流が流れる、ということになります。
これは、反対側の抵抗に流れなかった電流が流れてきたことを表しています。
◆人体に流れる電流の計算
仮に、接地抵抗を100[Ω]としましょう。この時、図5において、人体に流れる電流を計算してみましょう。

よって、人体にはあまり電流が流れないことがわかります。
ただし、電源電圧が高い場合は、流れる電流Iも大きくなるので、接地抵抗をより小さくして、人体に流れる電流を小さくする必要があります。
3.接地抵抗の測り方
では、接地抵抗の測定の仕方を紹介します。
接地抵抗が高くなってしまうと、人体に流れる電流が大きくなってしまうので、接地抵抗をきちんと測定することが重要です。
測定に関する必要事項は「電気設備に関する電気設備技術基準」に定められていますので、ここでは原理だけ簡単に説明します。
まず、測定にあたっては電極を2つ用います。その電極間に図7のように交流電流Iを流し、そこに発生した電圧Vを測定することで、オームの法則を用いて接地抵抗Rxを測定します。

図7
図7において、交流電流Iを流した時、電圧計が電圧Vを示したとします。このとき、接地抵抗Rxは下記のように求めることができます。

Vは電圧計が示す値で、Iは流した電流ですから、どちらもわかっている値ですね。よって、接地抵抗Rxを求めることができます。
このように、電流を流してそこに発生した電圧降下から、抵抗を測定する方法は、電圧降下法と呼ばれます。
4.まとめ
・2つの抵抗による並列回路の分流は、回路に流れる電流Iを抵抗の合計で割り、流れる抵抗の反対側の抵抗値を掛ければよい。
・接地抵抗は、人体の抵抗よりもずっと低くする必要がある。
・接地抵抗の測定方法は、電圧降下法で測定することが多い。