皆さんこんにちは!
本日は、RLC直列回路の過渡現象について解説したいと思います(*^^*)
この記事は、過渡現象そのものの意味は分かっている方向けの記事になります。
過渡現象そのものについてや、RL直列およびRC直列回路の過渡現象については、下記の記事で解説していますので、ぜひご確認ください(*^^*)
目次
1.回路方程式を立てる
2.ラプラス変換を用いて回路方程式を解く
3.解の公式を用いて部分分数分解をする
①特性方程式が2つの実数解をもつ場合
②特性方程式が2つの重解をもつ場合
③特性方程式が虚数解をもつ場合
1.回路方程式を立てる
では、実際に過渡現象を解析してみましょう。例えば、下記のような回路があるとします。

図1 RLC直列回路図
この回路は、抵抗R,インダクタンスL,キャパシタンスCが直列につながっているので、RLC直列回路と呼ばれます。
過渡状態の電流値の変化を解析するには、電流を時間関数で表すことです。そのために、微分方程式を解きます。
まずは、回路方程式を立てましょう。今回は、電流値の変化を知りたいので、キルヒホッフの電圧則を用いて等式を作るのがよさそうですね。
キルヒホッフの法則については、下記の記事で詳しく解説していますので、ぜひ確認してみてください(^^♪
電流を時間関数i(t)とすると、各素子に発生する電圧降下は下記のようになります。

電源は直流電源Eです。キルヒホッフの電圧則は、回路において正方向の電圧の合計(今回は電源Eのみ)と負方向の電圧(今回は抵抗R、コイルL、コンデンサCにおける電圧降下)が等しいというものですから、これを踏まえて回路方程式を立てると下記のようになります。

2.ラプラス変換を用いて回路方程式を解く
では、この式を解きましょう(*^^*)
私は、微分方程式が苦手なので、ラプラス変換を使いたいと思います。ラプラス変換は、微分方程式を簡単に解くとても便利なツールです。ラプラス変換については、下記の記事で解説していますので、よかったらご参照ください(^^♪
ラプラス変換を用いると、上記の式は下記のようになります。

今回はスイッチを入れた時にはじめて電流が流れますから、初期値は0です。
では、この式を解いてみましょう。
I(s)を方程式で表すことができました。しかし、残念ながらこのままではラプラス逆変換ができません。そこで分母を因数分解して、部分分数分解をします。
3.解の公式を用いて部分分数分解をする
部分分数分解をしたいのですが、この式のR、L、Cは未知数です。ふつうに因数分解するのは難しそうですね。こんな時は、解の公式を用いて因数分解をしましょう!
ということで、特性方程式を考えます。この式の特性方程式は式の分母、つまり下記の式です。

方程式の係数を、解の公式に代入するとこんな感じになります。


今回の式では、R、L、Cは未知数なので、その大小関係によって場合分けをする必要があります。
3.判別式Dによって3つの場合に分ける
部分分数分解の結果は、次の3つの場合に分かれます。
①特性方程式が2つの実数解をもつ場合
②特性方程式が重解を持つ場合
③特性方程式が虚数解をもつ場合
それぞれ見ていきましょう!
①特性方程式が2つの実数解をもつ場合
判別式Dが下記の場合です。

これは、判別式Dが0より大きく、特性方程式のsは2つの実数解をもつ場合です。特性方程式の解は下記のようになります。


よって、先ほどのI(s)の式は下記のようになります。
では、これをラプラス逆変換してtの関数に戻しましょう。(*^^*)
ラプラス逆変換の際にも、良ければ下記の記事のラプラス変換表をご利用ください(^^♪
では、ラプラス変換します。

この式は実はさらに式変形をすることができます。ここで、ハイパボリックサインsinhの公式を見てみましょう。

要するに、先ほどのi(t)の式を、このハイパボリックサインsinhの公式が使えるように式変形したいのです。i(t)の式の赤く塗った部分に着目して式変形しましょう。ルート内の第一項に4分の4をかけてみましょう。

さて、これでsinhの公式の形を作ることができました。よって、i(t)は下記のようになります。

式中で青いで示した2を、ルートの中にしまってしまいましょう。

なぜこんなことをしたかというと、参考書とかだとよくこの形で書かれているからです。
では、この関数のグラフを描いてみましょう。図2のようになります。

図2 特性方程式が2つの実数解をもつときの電流のグラフ
②特性方程式が重解をもつ場合
判別式Dが下記のようになるときです。

さて、これは判別式D=0となって、特性方程式sが重解を持つ場合ですね。この場合は、特性方程式の解は下記のような形になります。



では、この関数のグラフを描いてみると、図3に示します。

図3 特性方程式が重解を持つときの電流のグラフ
③特性方程式が虚数解をもつ場合
判別式Dが下記のようになる場合です。

これは、判別式Dが0より小さい場合ですので、特性方程式は虚数解を2つもちます。
よって、特性方程式は下記のように因数分解することができます。

このことから、I(s)は下記のように求めることができます。

これをラプラス逆変換すると、下記のようになります。

さて、ここで、下記の公式を使います。
sinh jt = j sin t
これを先ほどの式に代入すると、下記のようになります。

青い字で示したjは約分されて消えました(^^♪
求めたかった電流の関数i(t)は求められたので、これをグラフにしてみましょう!
図4 特性方程式が虚数解をもつときの電流の変化
特性方程式が虚数解をもつ場合のこの関数は減衰関数といわれ、最初は振幅が大きいですが、だんだんと小さくなり、定常状態になります。
RLC直列回路の電流の計算は以上です。