みなさんこんにちは!
本日は、ベクトルにおいて重要な概念のひとつ、「絶対値」について解説したいと思います(*^^*)
今回の目標は、ずばり「ベクトルの絶対値、つまりベクトルの矢印そのものの長さを求められるようになること」です!
なお、ベクトルの基本については下記の記事でも書いていますので、こちらもご確認ください(*^^*)
電気電子工学科生がベクトルの基本をわかり易く解説してみた
目次
1.ベクトルの絶対値=ベクトルの長さ
2.ベクトルの絶対値の求め方
3.三平方の定理の復習
4.ベクトルの絶対値の計算は三平方の定理の応用だ!
5.速度(velocity)と速さ(speed)は違う??
6.まとめ
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1.ベクトルの絶対値=ベクトルの長さ
これまでの記事では、ベクトルをx,y,zと3つの方向成分に分けて解析しましたね。これは、ベクトルをx軸、y軸、z軸の綱引きの関係で表し、ベクトルの大きさと方向を座標で分かるようにするためでした。
では、今度はその逆で、3つの成分からベクトルの矢印そのものの長さを求めてみましょう。
ベクトルの絶対値を表す際にも、数字の絶対値のときと同じように| |で挟みます。例えば、図1のようなベクトルがあるとします。

図1 ベクトルの成分表示の例
実はこれ、前回の記事の図3と同じものです。
この青い線のベクトルAは下記のように表されていますね。
ベクトルA=x’i+y’j+z’k
また、行列を用いて下記のようにも表すことができるのでした。

ただし、これらはベクトルAを3つの成分に分けているので、ベクトルAそのものの大きさはわかりづらくなっています。このときに便利なのが絶対値です!
2.ベクトルの絶対値の求め方
図1で示したベクトルの絶対値、つまりベクトルの大きさは、下記のように示すことができます。

式の左辺でベクトルAが| |で括られているのは、そのベクトルの絶対値であることを意味しています。
右辺は、各成分の長さ(スカラー量)の二乗を合計し、それに二乗根をかけています。これが二次元のxy平面上のベクトルであれば、絶対値は下記のようになります。

xy平面上のベクトルでは、成分はxとyの二つしかありませんから、これらの二乗を合計したものに二乗根をかければ、ベクトルの絶対値を求めることができます。
ちなみに、ベクトルの絶対値は、単なる大きさ(長さ)ですので、方向を持たないスカラー量です。覚えておきましょう!
ちなみに、平面上のベクトルの絶対値は電気回路を勉強するなら大変重要ですから、覚えておきましょう(^^♪
この公式を頭に入れておけば、今回は十分ですが、せっかくですから、どうしてこうなるかを見ていきましょう!
3.三平方の定理の復習
ベクトルの絶対値の計算について考える前に、三平方の定理について復習しましょう。「なんで?」って思われた方、次の項にその理由が書かれていますので、ぜひお付き合いください(*^^*)
三平方の定理の基本的なことはわかってるよ!ってかたは、次の項まで読み飛ばしていただいて構いません。
三平方の定理とは、直角三角形の比を利用して辺の長さを求めることのできる定理でした。例えば、図2のような直角三角形があった場合を考えましょう(*^^*)

図2 直角三角形の例
この直角三角形の斜辺の長さをa、底辺をb、対辺をcとします。すると、それぞれの辺の長さの関係は下記のようになります。

また、皆さんがよく知っている有名な三角比、ありますよね?鋭角が30°の直角三角形と、鋭角が45°の直角三角形です!その三角比は図3のようになっていたのでした。(図の辺の視覚的な比は正しくないです。ごめんなさい(^-^;)

図3 有名な直角三角形の三角比
これらの三角形も、当然三平方の定理は成り立ちます。

これって、まさに三平方の定理の関係です(*^^*)鋭角が45°の直角三角形についても、成り立つことがわかりますね(^^♪
4.ベクトルの絶対値の計算は三平方の定理の応用だ!
それでは、ベクトルの絶対値がどうして各成分の2乗の合計の二乗根なのか、考えていきましょう(^^♪
まずは2次元、xy平面上のベクトルについて考えましょう!図4のようなベクトルを考えます。

図4 平面上のベクトル
図4のベクトル、よく見ると底辺がx’、高さがy’、斜辺がベクトルA(絶対値)の直角三角形に見えませんか?と、いうことは、三平方の定理によって下記の式が成り立ちます。

ここから、ベクトルAの絶対値|A|を求めると、両辺の2乗根を求めればいいのですから、下記のようになりますね。

これは、まさにベクトルの絶対値の式ですね(^^♪
では、今度は3D、空間のベクトルの絶対値について考えてみましょう!先ほどはベクトルAとしましたので、区別するために今度はベクトルBとしましょうか。図5を見てみましょう。

図5 三次元のベクトル
図中の、先ほど計算した青い線のベクトルA、灰色の線のベクトルBのz方向成分z’、赤い線のベクトルBは直角三角形を形成していることがわかりますよね(*^^*)
つまり、三平方の定理を用いると下記の式が成り立ちます。

ところで、ベクトルAの絶対値|A|は先ほど求めたので、それを代入すると下記のようになりますね。

ルートの中身を計算すると、下記のようになります。

これで、ベクトルの絶対値の式を導くことができましたね!(*^^*)
5.速度(velocity)と速さ(speed)は違う??
電気電子工学科生がベクトルの基本をわかり易く解説してみたの記事で、速度(velocity)はベクトルで速さ(speed)はスカラーということを書きました。
速さを式で表すとしたら、x,y,z成分に方向を持つ式で表すことができます。
速度(velocity)=x’i+y’j+z’k
それに対して速さは速度の大きさ、絶対値です。そのため、速さは下記のように表すことができます。

ベクトルの絶対値は、単なる大きさですから、方向を持たないスカラーなのでした。
これで、速度(velocity)がベクトル、速さ(speed)がスカラーであることがイメージしやすくなったのではないかと思います(^^♪
6.まとめ
・ベクトルの絶対値とは、ベクトルの矢印の長さそのものである。
・ベクトルの絶対値は、各素子の2乗の合計の二乗根で求めることができる。
・ベクトルの絶対値の公式は、三平方の定理を利用したものである。
・速度はベクトルだが、速さは速度ベクトルの絶対値なので、スカラーである。
以上で、今回の解説は終わりたいと思います!
特に平面のベクトルの絶対値は、交流回路を学ぶ上では大変重要となるので、ぜひしっかりと学習しましょう!