こんにちは!
今回は、学生であれば、線形代数で勉強するであろう、ベクトルの成分表示について解説します!
電磁気学では、ベクトル解析がたびたび出てきますので、しっかりと復習しておきましょう(^^♪
まずは、ベクトルとスカラーの違いについて復習しましょう!
目次
1.ベクトルとスカラー
2.ベクトルの表記方法
3.ベクトルの成分表示とは
4.単位ベクトルを用いたベクトル表示
5.行列を用いたベクトルの成分表示
6.まとめ
1.ベクトルとスカラー
数値(主に物理で出てくる数値)は、ベクトルとスカラーという2種類に分類することができます。
単純に言えば、ベクトルとスカラーの違いは下記の通りになります。
ベクトル・・・大きさと方向を持つ数値。
例:速さ、風、電流、電圧、力、etc….
速さや風は、進行方向がありますよね。電流や電圧も正方向や負方向など、方向を持っています。また、力もかかる方向があるベクトルです。すべて方向を持っていることがわかりますね。
スカラー・・・大きさのみを持ち、方向を持たない数値。主に量を示す数値が多いです。
例:温度、質量、体重、速さetc…
どれも大きさのみを示す数値で、方向はないことがわかりますか?
ちなみに、「速度」と「速さ」は混同されがちですが、「速度」は大きさと方向を持つベクトルです。これは覚えましょう。対して「速さ」は、「速度」の絶対値、つまり、「速度」の大きさを表しています。ベクトルの絶対値はベクトルの「大きさ」を表していますので、覚えておきましょう。よって、速さは「大きさ」のみを表しているので、日本語って難しいですよね(^-^;
これは、ベクトルの絶対値について学ぶと、違いがよくわかるようになります!
2.ベクトルの表記方法
ベクトル値のaがあるとします。スカラーは方向を持たない数字なので、特別な表記方法はないのですが、ベクトルは大きさのほかに方向も持っているので、スカラーと一目で区別できるように表記します。
ベクトル値の表記方法は複数種類あります。

ベクトル値は基本的に太字で表記することが多いです。それが1つ目の表記方法です。ただし、手書きでベクトルを表示するとなると、毎回塗りつぶして太くするのは時間がかかりますよね。
そこで、2つ目の表記方法のように文字に縦線を入れます。これによって、太字と同じ意味だよ~ってことを示します。
3つ目の表記方法は、右向きの矢印が文字の上に書かれているものです。これによって、その数値が方向を持つベクトルであることがわかるようになります。
3.ベクトルの成分表示とは
ベクトルとは、大きさと方向を持った量です。この方向は、360°どこを向いてても大丈夫です。
しかし、それを具体的な数値或いは座標で表したいと思ったら、どうすればよいでしょうか。
ここで、ベクトルを座標で表示することを考えてみます。私たちが扱う座標では、x軸、y軸、そしてz軸の3つの方向を持っています。そこで、任意の方向を向いているベクトルを3つの方向に分解してしまおう!というのがベクトルの成分表示です。ひとつのベクトルは、3つの方向に分解することによって、具体的な数値で知ることができます。ちょっとわかりにくいですか?それでは、図1で確認してみましょう!

図1 平面上のベクトル
いきなり3Dにしてしまうとわかりにくいかと思いますので、2Dつまりxy平面上にあるベクトルAを考えましょう。
ベクトルAは、x軸にもy軸にも平行ではありません。しかし、図1のように、x方向成分x’とy方向成分y’に分けてみると、なんだか具体的な数値で表せそうじゃないですか?(*^^*)
x’の値が大きくなると、ベクトルAはx軸方向に傾いていきそうですよね!y’の値が大きくなっていけば、ベクトルはy軸の方に傾いていき、傾きが急になりそうですよね!
なんだか、x軸とy軸が綱引きをして、ベクトルを自分の方に引き寄せようとしているように見えませんか?
このとき、x’とy’はそれぞれx軸とy軸の引くパワーと考えるとイメージしやすいかもしれません。このそれぞれの引くパワーこそが、ベクトルの成分なのです!
図1では2次元の平面上のベクトルについて考えましたが、これは3次元になっても同じです。3次元というのは、図1の平面に垂直方向に軸が1本増える(一般的にz軸と呼ばれる)のですから、3次元では3軸で綱引きをしていると考えればいいですね!
このようにして、1つのベクトルは3つの成分に分けることができるのです(^^♪
成分表示の方法には、単位ベクトルを用いる方法と、行列を用いる方法の2つがあります。それぞれを見ていきましょう!
4.単位ベクトルを用いたベクトル表示
電磁気学のための座標系①直交座標系(デカルト座標系)の記事で少し紹介しましたが、ベクトルは直交座標系のx,y,z軸方向の成分表示することができます。その際には、単位ベクトルを用います。単位ベクトルとは、単位当たりのベクトルと定義されています。要するに、「大きさが1のベクトル」と覚えておきましょう。つまり、単位ベクトルにスカラー量(方向を持たない大きさ)を乗じることで、ベクトルを示すことができます。ベクトルをA、スカラー量をx’、単位ベクトルをaとすると、ベクトルAは下記のように表すことができます。
ベクトルA(大きさと方向を持つ量)=スカラー量x’×単位ベクトルa=x’a
図2で確認しましょう(^^♪

図2 単位ベクトルとベクトル
図2では、赤の線が単位ベクトル、緑の線がベクトルA、青い線がスカラー量x’を示しています。ちなみに、青い線はx軸から上に伸びていますが、これはスカラー量x’の点での目盛りを示しているだけで、ベクトルではないので注意してください!
このことから、ベクトルAは単位ベクトルとスカラー量の積で表すことができるとわかりましたね(*^^*)
直交座標系の説明をしたときには、x,y,z軸方向の単位ベクトルはそれぞれax,ay,azと示しましたが、よくi,j,kと表示されます。
iはx軸に平行(x方向)、jはy軸に平行(y方向)、kはz軸に平行(z方向)な単位ベクトルです。ですので、今回の記事では、単位ベクトルはi,d,kで表示したいと思います。
図2では、x軸に平行なベクトルAを考えましたが、今度はどの軸にも平行でないベクトルAを考えてみましょう!図3を見てください。

図3 単位ベクトルを用いたベクトル
いいですか?図3の赤い矢印が単位ベクトルですよ。そして、緑色の3つの矢印がそれぞれ、ベクトルAのx,y,z方向成分のベクトルです。これが、それぞれスカラー量に単位ベクトルを乗じた値(x’×単位ベクトル、y’×単位ベクトル、z’×単位ベクトル)であるということは、図2で勉強しましたね。そして青い矢印のベクトルAは、今回解析したいベクトルです。もともとのベクトルといった方がよいでしょうか。
電磁気学のための座標系①直交座標系(デカルト座標系)でも書きましたが、ベクトルの足し算は、片方のベクトルの矢印①の先端を、もう片方のベクトルの矢印②の後端につなげ、ベクトル①の後端からベクトル②の先端につなげるのでした。
つまり、図2からベクトルAは、x成分、y成分、z成分の足し算、つまりx’i、y’j、z’kの足し算であることがわかります。つまり、ベクトルAは下記のように示すことができます。
ベクトルA =x’i+y’j+z’k
このことから、単位ベクトルを使うことで、ベクトルをx成分、y成分、z成分が明白になりましたね(*^^*)
5.行列を用いたベクトルの成分表示
単位ベクトルを用いた成分表示のほかに、行列を用いてベクトルの成分を表示する方法があります。例えば、x方向成分がx’、y方向成分がy’、z方向成分がz’のベクトルAがあるとすると、Aは行列を用いて下記のように表すことができます。

括弧の中に3つの要素(緑の文字)が並んでますね?これは何でしょうか。

・ベクトルは大きさと方向を持つ量、スカラーは大きさのみ持つ量である。
・ベクトルの表記方法には、太字、文字に線を入れる、文字に矢印を入れる、などがある。
・ベクトルの成分表示の方法は2つある。
・単位ベクトルi,j,kはそれぞれx,y,z方向の単位ベクトルを示しており、これにスカラー量をかければ成分表示ができる。
・行列を用いた成分表示では、括弧内の数字は上からx,y,z方向の成分を示している。
ベクトルの成分表示について、わかってもらえたでしょうか(*^^*)
今回は、長くなってしまったのでここまでにしたいと思います(^^♪
もしわからないことや、もっと知りたいことなどありましたら、お気軽にコメント欄までどうぞ(*^^*)
この記事が少しでも皆さんのお役に立てると幸いです(^^)/